~オリックス、ヒューストン・アストロズ、世界一への道④(タンキング②) の巻~
タンキング
~オリックス、ヒューストン・アストロズ、世界一への道③(タンキング) の巻~の続き。
2017年のアストロズ、その前年のカブスの世界一の陰にはタンキングあり。
メジャー発のオープナー(というよりもその派生形のブルペンデー)は日本でも市民権を得てきていますが、このタンキングが流行することはないでしょう。
タンキングの目的は金の卵中の卵、全体ドラフト1位(もしくは上位)の獲得。
前シーズン最も成績の悪かったチームにその指名権があるのがメジャー。
それが成り立つのは、MLBのドラフト制度が完全ウェーバー制だから。
くじ引き
それに比べて日本。
ドラフト1位は確定するまでくじ引きをし続けるため、当年のリーグチャンピオンに複数球団競合の逸材が加わる可能性があり、逆に言えば、メジャーでは全体1位の選手を獲得できる最低勝率のチームが(ドラフト1位ながら)全体12位の選手しか獲得できないするという悲劇が起きます。
昨年の例でいえば、12球団ワースト勝率のヤクルトは星稜・奥川恭伸を競合の末獲得するも、ブービーのオリックスは石川昂弥を外し河野竜生を外し結果11番目で宮城大弥を指名。
ドラ2指名で全体13もしくは14番目の獲得できるという利点はあるものの、メジャーに比べると最下位(タンキング)の利点が薄すぎます。
プレーオフ
またプレーオフに進出する確率にも差があり、
メジャーではワイルドカードゲーム出場の2チームを含め計10チームで.333。
NPBは各リーグ6チーム中3チームが出場できるため計6チームで.500。
リーグ半分のチームがプレーオフに出場できるなか、あえて意図的に負ける選択をするのは非現実的選択。
ルーノーの覚悟
あとは、フロント(編成担当者)の覚悟。
アストロズ・ルーノー前GMの2014年の発言。
「2017年に優勝するつもりなら、12年に98敗しようが107敗しようが大した違いはない。17年の優勝に向けてどれだけ近づいているかが重要」
「2017年に優勝」とはっきりと明言。
そしてそれを達成。
「3年後にいいチームをつくる」
一方、育成への方針転換を主導するオリックスGM・福良淳一の発言(Sportivaより)。
―― 中・長期的というのは、何年先をイメージしているんですか。
「高校生の野手には3年で出てきてほしいと思っています。ピッチャーもそうですね。(山本)由伸は早く出てきてくれましたけど、今は3年後にいいチームをつくるというイメージで編成に取り組んでいます。
内野はドラ1の高卒2年目、太田椋(天理)、もうもうひとり高卒2年目の宜保翔(未来沖縄)、あとはルーキーの紅林弘太郎(駿河総合)の3人にしっかり固めてもらってね。外野は(吉田)正尚もいるし、西浦颯大も若いし、宗佑磨もいます。彼らが高卒のチーム生え抜きとしてしっかりはまるべきところへはまってくれたら、これは楽しみなチームになると思っています」
リーグ制覇が3年後でなく、野手の台頭と「いいチームをつくる」のが3年後。
期限
また、
―― このGMというポジションですが、やりがいと難しさはどんなところに感じていますか。
「やりがいは、監督をやっていたらなかなか目の届かない育成というところに力を注げるという、そのへんの楽しさにあるんやないですかね。とはいえ、シーズンに入ればチームの結果というものを度外視することはできません。育成しているから一軍が勝たなくても許してもらえるということはあり得ませんし、一軍の状況はGMとして常に考えていかなければならない。何年も待ってもらえるわけじゃありませんから、当然、一軍の結果は求められます。そこが難しさなんでしょうね」
ルーノーと違い、何年後という宣言もなく、「優勝」という二文字も出ない。
我慢に慣れたオリックスファン。
しかし勝利と並列することが難しい育成の日々が続くのであれば、いつまでにという期限は公言してもらいたい。
目標成就は別としても。