~オリックス、犠打の有効性 の巻~
送りバント失敗
昨日の敗因、
西の失投、毎度のチャンスでの逸機、九回正念場での若月そのまま打席へなどいろいろありましたが、
最も大きかったのは、駿太の二度の送りバント失敗でしょう。
無死一二塁から二度とも送れず。
しかし、
フォースプレーのこの場面、なかなかバントを決めるのが難しいのも事実。
しかも打線は下位へいくわけで。
私はいつも思います。
無死一二塁、
一つのアウトを献上してまで、
しかもフォースプレーで送れない危険を冒してまで、送りバントはやるべきことなのかと。
送りバントの有効性①(一回)
ここに一冊の本があります。
著者:鳥越規央、
「9回裏無死1塁でバントはするな -野球解説は”ウソ”だらけ」(祥伝社出版)。
まだセイバーが知られてなかった時代に書かれたこの本。
暇なときによく読んでいるのですが、
最も興味深いのはタイトルにもある、送りバントの有効性を論じた章(著書でもトップページに掲載されています)。
詳しくはぜひご一読願うとして、
今回は一つのデータを引用させていただきたいと思います。
後攻チームが一点差で負けている状況での勝利確率をあらわした数値です。
一回:ノーアウトランナー一塁→47.6%、ワンアウトランナー二塁→46.2%。
すなわち、
序盤の一回、無死一塁で後攻チームの勝利確率は47.6%。
一死二塁となった場面での勝利確率は46.2%。
送りバントを決めること、
すなわち相手に一つのアウトを献上して二塁に進めたほうが無死一塁(犠打を選択しなかった)と比べて、勝利確率が下がっています。
送りバントの有効性②(九回)
では九回ではどうでしょう。
NPBでは一点ビハインドの九回裏、ランナー一塁となった場合はほぼ無条件に犠打ですが、
果たしてその効果は?
九回:ノーアウトランナー一塁→32.1%、ワンアウトランナー二塁→28.4%。
犠打でワンアウトを捨て、二塁に送ったほうが、明らかに勝利確率は下がっています。
紙幅の関係上省略しましたが、二~八回も同様で、
ワンアウトランナー二塁の勝利確率がノーアウトランナー一塁を上回ることは一度もありませんでした。
大量得点の可能性
そこまで著明な差はありませんが、
統計上、バントの有効性は否定されたわけです。
比較としてよくあげられる例ではありますが、
得点は必ず1点ずつしか入らないサッカーと、一挙に4点入る可能性のある野球。
その差はすなわち本塁打(ないし長打)でしょう。
その本塁打攻勢に、
金子が、山岡が、そして西が沈みました。
ちょこちょこ(セイバー的にはけっして有効とはいえない)バントに固執するよりも、
自由に打たせた方が、勝利確率が高くなる。
それは長打が出ることで大量得点の可能性が高くなるから。
振り返れば、オリックスが大量得点を奪う機会はほぼありません。
それもこれも、
犠打で一つのアウトを捨てているから。
攻撃の機会を自ら減らしているから。
二年の反省
といいつつも、
評論家時代に連名で、『野球の無死1塁で用いられる送りバント作戦の効果について』という論文を発表し、
そのなかで送りバントの効果について否定的な結論を得た、現日本ハム監督・栗山英樹も犠打を多用しているように、
やはり長年植え付けられた慣習は、
勝負の舞台に立てば立つほど、容易に捨てられるものでもないのも事実でしょう。
しかも福良は現役時代、二番セカンドとして小技を駆使して生きてきた選手。
1993、94年にはリーグ最多犠打を記録しているほど。
であれば、バントに偏執的なほどに固執してしまうのも仕方ない面はあります。
ただ、その考え、信念のもと動いた結果、
監督就任後のこの二年、まったく結果を残せていません。
いまこそその事実に向かい合い、伏せた目を開くときです。
信念も信頼も大いに結構。
ただ、それで結果を残せていないのであれば、
自戒し、改めなければなりません。
バントにこだわる福良カラーを全部捨てる必要はなく、
ただかなりの比重で薄めていただきたい。
思えば、福良が自らの信念や理想をいったん横に置き、
ロメロ、マレーロ、モレルを三人並べたあの頃の野球が、もっとも面白く魅力的でした。
追伸:
しかし、オリックスに長打が打てる選手が少ないのも、悲しいかな、事実。
それならば、そういう選手を時間をかけてでもつくっていくべし。
犠打の練習よりも飛距離アップを。
それだけです。