祈優勝! オリックスバファローズ

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佐藤達也

~オリックス・佐藤達也、魂の欠片(惜別・2018④) の巻~




11勝22敗14セーブ109ホールド

シーズン最終戦。
引退を表明していた小谷野に対して過剰といえるほどのセレモニーが準備されていましたが、
本来ならばこの人のために行うべきでした。

佐藤達也

プロ生活7年。
262試合、11勝22敗14セーブ109ホールド
オールスター出場2回。
そして最優秀中継ぎ賞2回

その成績も立派ですが、
私の心に残るは、そのストレート。

それはまさしく、体と魂を削って投じられたストレート



分かっていても打てない

178cmと、現代野球では決して大きくない体から放たれた佐藤のストレートは、まさしく剛球
平野や岸田のようなアウトローに続けられる制球力はなし。
どこにいくかはボールに聞いてくれという佐藤の豪快なピッチングは、息苦しい社会の些事を忘れさせる魅力がありました。

それでもパの強打者のバットは空を切る。
分かっていても打てない
それが佐藤達也のストレート。

アンダーシャツを着ず、ユニフォームの袖を捲り上げる。
肌寒い初春も木枯らし吹く晩秋も。
オリックスのマウンドには常に佐藤達也の姿がありました。



戻ってこず

その姿が消えたのは2016年。

ここに一冊の本があります。
週刊ベースボール2016年5月23日号。
佐藤のストレートが弾き返されるようになった頃。

特集記事の「12球団勝利の方程式大解剖」のオリックス版勝利の方程式からすでに佐藤達也の名が消えています。
また、セイバーで12球団のリリーバーを分析していますが、
佐藤達也の与四球割合(BB%)は19.0%とワースト。
さらにフライ打球に占める非本塁打の割合(HR/FB%)でも23.5%とワースト。

いままで手を出していた佐藤のストレートが見極められ、
もう一押しがなくなったストレートを捉えた当たりが軽々とフェンスを越えていく。

あの日の佐藤達也はもう、戻ってきませんでした



努力家

実働4年は、奇しくも阪急ブレーブスを日本一に導いた剛球右腕・山口高志とほぼ同じ。

勤続疲労はあったにせよ、佐藤の場合、自らに厳しすぎた点が野球人生を短くしたことは否めません。
ファンフェスタのビデオレターでオリックスのブルペンを共に支えた平野佳寿も語っていましたが、とにかく練習の虫。
肩は消耗品という考え方と対極に位置し、春季キャンプで投げまくる佐藤の姿はもはや名物となっていたほど。

2018年オリックスバファローズパーフェクトガイド(オフィシャルイヤーブック)のなかの、Bs RANKING 2018 という特集記事。
選手互選で「リーダーシップ」「インテリジェンス」等各部門のランクを決めるのですが、「努力家」部門で堂々のトップに輝いたのが、佐藤達也。

休むことなく練習に励んだこと、常にボールを投げ続けたこと。
同じく一流投手である平野が悔恨を込めて引退した佐藤に伝えたほどですから、それが佐藤の体を蝕んだのも事実でしょう。

ただ、それだけの練習があったからこそ
プロでもタイトルを取ることができた。
私たちの記憶に刻まれる投手になった。
それは間違いありません。

そして佐藤自身、それを悔やんではいないでしょう。
この生真面目さこそが、佐藤達也なのだから。



「当時いた投手で作った記録なんで。その中にいられたのが、いちばん嬉しかった」

佐藤が太く短いその野球人生でもっとも誇りに思っているのは、
2度のタイトル(最優秀中継ぎ投手)受賞ではなく、
2014年に達成した「7回以降(終了時点でリードした試合)100連勝」の記録。

当時いた投手で作った記録なんで。その中にいられたのが、いちばん嬉しかったですね」

個ではなく和を喜ぶ。
ここに佐藤の真髄が表れています。



新しい一歩

そんな努力家で他人思いの佐藤達也を球団が手放すはずがなく、
来年からは球団広報として新しい一歩を踏み出します。

口下手な印象も、上記パーフェクトガイドで「腰が低い人」「ジェントルマン」部門でもダントツのトップに輝いた佐藤達也のこと。
その赤心で、きっとチームを支えていってくれることでしょう。

山口高志は阪急を球団初の日本一に導きました。
チームのため腕を振り続けた佐藤にもその栄光を手にしてほしかった。
裏方として、いつかともに喜んでくれる日が来てくれれば。



魂の欠片

引退決意の時期の差であったとはいえ、こうやって書いてくると、
佐藤達也の引退セレモニーは、謙虚な佐藤らしくフェンフェスタの方がよかったのかもしれません。

最後に三度、2018年オリックスバファローズパーフェクトガイドから。
「努力家」「腰が低い人」「ジェントルマン」部門でNo.1に選んだチームメートの、佐藤達也に対するコメントを載せて締めたいと思います。

「練習時間が長い、家に帰らない」
「投げたがり」
「いつも練習している」
「秋季キャンプで一番走っていた」
「理想の上司」
「(腰が)低すぎる」
「やさしい」
「挨拶が好きです」
「後輩にも低姿勢が素晴らしい」
「いい人」
「素晴らしい」
「いつも腰が低い」
「マジでNo.1」
「すごい人なのに低姿勢」
「大人!」
「かっこいいです」
「本当に紳士」
「the紳士」
「(佐藤)しかいない」
「いつも変わらない」
「優しすぎる」

仲間のこの声が、全てです。

体と魂を削りながらストレートを投げ続けた佐藤達也。
その欠片は、
ファン一人一人の胸に、大切な思い出として突き刺さっています。



-佐藤達也
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