~オリックス・杉本裕太郎の変身 の巻~
ジャッジか杉本裕太郎
背番号「99」といえば、ヤンキースのアーロン・ジャッジか杉本裕太郎。
200㎝、120㎏とNFLの猛者にも勝る体躯のジャッジには引けをとるものの、NPBではダントツの巨体の杉本。
こちらも52本塁打を放ち新人最多本塁打記録を樹立したジャッジ同様に長打力が魅力。
その杉本、浮き沈みの激しい4年のプロ生活を経て意識を変えた様子。
以下、2月25日の日刊スポーツの記事より。
キャンプ打ち上げから、もう2ヶ月も経ったのですね…。
軽量化×スイング速度
「ラオウ」が大変身を遂げた。オリックス杉本裕太郎外野手(28)が絶好調をキープだ。実戦はここまで20打数11安打の打率5割5分(25日現在)をマーク。凡退した打席も芯で捉えることが多く、コンタクト率も上昇中。昨年までプロ4年で通算13安打、うち7本のアーチを描いているラオウに一体何が起こったのか…。
「バットを軽くしたんです。870グラムから800グラムに。今のところ結果が出ているので、間違ってないのかなとは思ってます」
新たな発見は1月の広島にあった。例年通り、チームメートの山岡、近藤、榊原らと合同自主トレに参加。ふと借りたバットが大変身のきっかけだった。
「カープの羽月に『バット貸して!』って。それで打ったらオモチャみたいに軽くて。打球速度を測ったら、元々のバットで打ったときと数値が変わらなかった。それなら操作性を重視しようと思って軽いバットを発注したんです」
公称190センチ、102キロの28歳ラオウが、167センチ、70キロの19歳羽月からヒントを得た。体の大きさも、年齢も関係ない。「ただ、打ちたい-」。その貪欲な心が体を突き動かす。
重いバットの方が軽いバットよりも打球速度が増すと言われてきましたが、それだけが要因とはならずスイング速度も当然に関与します。
そのスイング速度は重いバットよりも軽いバットの方が増すのは明白。
800グラムと870グラムのバットで打球速度が変わらないというのはたぶんそういうことで、杉本課題の確実性を増すという観点でみれば操作性の増す軽いバットの方がより効果的ともいえます。
トップバランスからミドルバランスに
バットのタイプは、先端に重さを感じるトップバランスからミドルバランスに変更。「大振りしない意識で。頭の位置がずれると打てないんで、インパクトの瞬間を大切にしています」。フリー打撃では「前よりも(打球が)飛んでない」と言うが、21日の紅白戦では「今季1号」を放った。「実は…」と漏らすように、バットを指2本分短く持っていてもスタンドに運ぶパワーがある。
ヘッドが効くぶん飛距離が出るのがトップバランス、バットの中間部に重心が置かれていることでコントロールしやすいのがミドルバランスのバットの特徴。
杉本のような力のある長距離打者はトップバランスを使うのが一般的ですが、当たれば飛ぶだけの力があるのだから逆に制御しやすいミドルバランスのバットを使うべきとの説もあり(「そんなに振らんでも当たれば本塁打だろう」とアドバイスを送りTの開花を促した岡田彰布の言葉を想起させます)。
杉本の凡退時によくみられるこねたバッティングも、ヘッドバランスの場合によくみられる光景。
角を矯めて牛を殺す
この杉本の意識改革。
上述した通り、論理の裏付けもある選択も、このブログで時折書いてきた通り、個人的には諸手を挙げて賛成とはいかず。
紅白戦では数字を残したものの、実戦が進むにつれ凡打が増えオープン戦後半には降格。
長打を打てる選手が確実性を求めた結果、その最大の長所すら失って没個性となり埋没していった過去がどれだけあったか。
杉本(と周りの指導者)を観ていていつも思うのは、「角を矯めて牛を殺す」ことなかれということ。
ただ、選手が現状を把握し色々と工夫することは成長に欠かせぬもの。
杉本の現在の課題は確実性であることは明らかなので、そこを克服しようとする杉本の取り組みが無駄になることはないはず。
首脳陣の我慢
あと、首脳陣がもっと我慢を覚えないと。
NPBにおいて最も育ちにくいのが長距離打者。
芽が出るは容易ではないということ、時間がかかるということ、さらには十分な栄養分(この場合は打席数)が必要ということを認識しなくては。
長打と三振数の相関性は近年のメジャーをみれば一目瞭然。
たとえば5打数1安打。
その内訳が4三振に1本塁打。
4三振を批判するか、1本塁打を称賛するか。
後者でないと、長距離打者はスイングが小さくなりその価値を失います(この例の打率2割にも届いていないというのが現状杉本が使いづらい要因なのですが)。
よろしければ一押しお願いします。