~オリックス、球辞苑「ホームランキャッチ」 の巻~
スーパープレー
NHK・BS1にて絶賛放送中の球辞苑。
毎回、狭い分野に焦点を絞り、そのキーワードをもとに科学的かつ論理的に深く掘り下げていく、野球ファン必見の番組です。
先週のテーマは「ホームランキャッチ」。
ゲストとして、現オリックス二軍監督の田口壮が出演し、
いつもの軽快なトークと、日米でのプロ野球経験に裏付けされた理論で、観るものをうならせました。
フェンスの高い京セラドームでホームランキャッチを観ることは、大幅な球場改装でもしない限り今後もないでしょうが、
かつて、オリックスの前身・阪急ブレーブスの名外野手がみせたホームランキャッチが、MLBクーパーズタウンの野球殿堂で日常的に映像を流す栄誉に浴したのは有名な話です。
山森雅文。
阪急ファンにとっては忘れられない名外野手で、
このホームランキャッチは、ブレーブスファンがいまでも誇りとするプレーです。
打たれたのが山田久志、
打たれた場所は、いまはなき西宮球場。
やけに明るい人工芝を山森は駆け抜け、いまは珍しくなったラッキーゾーンのフェンスに駆けのぼり、身を乗り出してのスーパーキャッチ。
色褪せぬ、すばらしい思い出です。
伝統
もちろん、
ホームランキャッチがテーマの今回の球辞苑でも、この山森のスーパーキャッチは大取で扱われていましたが、
そこで山森が発したことばが印象的でした。
「(外野守備の極意は)福本さんから教わった」と。
そのことばをもとに今度は番組スタッフが福本のもとに向かうと、
福本曰く、「中田(昌弘)さんから教わった」と。
で、そのVTRが終わりスタジオに戻ってくると、
今度は田口曰く、「(フライ捕球の足の運び方について)ボクも同じことを教わった」と。
阪急時代の伝統が、時を超え受け継がれていたことに田口は驚嘆し、
伝統の大事さをしみじみと感じていました。
強いチームであったから、自然と伝統が受け継がれ、
伝統が継承されるからこそ、強さが保たれる。
オリックスは、
いつ、この伝統を失ってしまったのでしょうか。
懐古と現実
20年間の敗者の歴史が、
負け犬根性をチーム全体に植え付けてしまいました。
負けることを恥ずかしいと思わない。
生え抜きも外様も。
あの時代を知る福良と田口が、躍起になって負の遺伝子の駆除に取り組むも、
1年ではいかんともしがたかったのが現実でしょう(福良に関してはヘッドコーチ時代を含めると、オリックスに復帰してからもう4年が経つのですが…)。
私は、この球辞苑という番組、
大好きでいつも録画して観ているのですが、
阪急の選手が多く出ている印象をもちます。
山森、福良、松永、山田…。
それだけ、あの時代の勇者たちには魅力があり、
後世に語り継がれるだけの、卓越した技術があったということでしょう。
翻ってこんにち。
「インハイ」というテーマの際に、インハイを最もよく打った選手としてオリックスのルーキー・吉田正尚がピックアップされていましたが、その回を除くとほとんど、オリックスの選手は出てきません。
懐古に浸ることができるのもファンとして幸せなことではありますが、
いまこのとき、
いま目の前で、
もっとわくわく、感嘆の声をあげるようなプレーをみていたい。
そして、
いまから10年、いや20年後に、
語り継がれるような選手になってほしい。
今年こそ、暗黒の歴史に終止符を打ち、
新しい歴史を、新しい伝統を築き上げてほしいと、願っているのですが、
この思いは、いつもいつも届きません。