~オリックス、福田周平の二死スリーボールからのサヨナラセーフティスクイズで首の皮一枚繋がる! の巻~
山本由伸
逆転優勝のためにはさすがにもう落とせなくなったオリックス。
先発は白星を計算できるエース・山本由伸。
初回に1点、七回に1点失い、7回2失点。
中5日の影響あったか、三者凡退は一度だけと本調子とは言えない内容も、よく踏ん張ってくれました。
疲労困憊、プレッシャーのかかるこの最終盤。
エースの仕事は十分に果たしてくれました。
福田→宗→中川→吉田正尚
課題はいつも攻撃陣。
初回の1点も重く感じてしまう貧打線ながら、初回、一番・福田の四球からの二番・宗のタイムリーツーベースですぐに同点。
中川が流して三塁に進め、吉田正尚の犠飛で一気に逆転。
連打が難しいなか、中川の進塁打はらしい一打。
その後幾度もチャンスをつくるも、ここぞの一打が出ず、七回に追いつかれ。
能見篤史
中5日・山本は110球、七回で降板。
八回先頭の安田にぶつけたのは、今季限りでの引退を発表した能見篤史。
白髪も目立つ能見ですが、投げるボールにフォームはいまも若々しい。
全球真っすぐ勝負で安田を三振に斬りました。
日向より陰での活躍が大きかったオリックス兼任コーチ・能見。
昨季の25年ぶりパリーグ優勝に果たした役割も大きいものがありました。
お疲れさまでした(能見についてはまた別日に)。
激走・宗佑磨
能見の登場で盛り上がったスタジアム。
八回裏に宗の二塁打から二死一三塁となって頓宮の初球。
益田のシンカーを捕手が前に弾いたのを見逃さなかった三走・宗が激走。
ヘッドスライディングで本塁に突っ込み、足で勝ち越し点を奪い取りました。
三森が佐々木朗希を足で崩した場面を想起させる好走塁。
後ろや横でなく前へこぼれたボールは心理的に突っ込みにくいものですが、勇気をもって走った宗。
その勇気を心から称えたい。
不振のT
九回二死2ストライクから平野が同点に追い付かれての九回裏。
ライバル・ソフトバンクは敵地で完勝、優勝に望みをつなぐには同点でなく勝利が必須条件。
その九回裏、先頭の紅林がクローザー・オスナから左中間を破り無死二塁。
ここでバッターは不振のT。
期待は薄も、なにかやってくれるならばこの男でもあり。
が、なにかできるレベルの状態にあらず三振。
なんとか引っ張って紅林を三塁に進めようとしていたT。
引っ張るにはインコースと、内に来た球を打ちにいくも、さらにそこからカットで曲げてきた相手バッテリーが一枚上。
若月三ゴロで紅林三塁に進み、二死三塁でバッターは福田周平。
考えられないサヨナラ劇が、始まります。
サヨナラセーフティスクイズ
オスナ、ストライク入らず3ボール。
長打のない福田相手、真っすぐを置きにきますが、そこで福田がバントの構え。
ボール誘いの動きにしてはバントの構えが遅く、まさかと思ったときにはそのままセーフティスクイズ。
相手投手は外国人で動き緩慢、たぶん狙いはもっと投手寄りだったはずですが、打球は一塁ライン上に。
一塁手のタッチをよけようと大きく動いた福田、スリーフィートが怪しかったものの、空タッチでそのまま一塁ベースに滑り込み、塁審のジャッジはセーフ。
オリックスサヨナラ勝ち。
この試合を観ていた者たぶん誰一人として想定していなかったこの場面での福田の劇的なセーフティスクイズで、オリックス勝利。
優勝に向け、なんとか首の皮一枚繋げました。
失敗、批判の声を恐れない、福田のその勇気
二死からのスクイズがまずなく、しかも打者有利のカウント3-0からなど、長いこと野球を観ていますが、記憶になし。
普通の打者ならば、3-0からいくら甘い球が来るとしてもまずウェイティング。
2球待って最後の球を凡打でも責められることはほぼなく、もしここで奇襲中の奇襲セーフティバントを仕掛け、それが投前にでも転がり失敗に終われば非難されるのは必定。
それでもこの3-0でセーフティスクイズを仕掛けた福田。
失敗、批判の声を恐れず、自身の信念にかけた、福田の比類なきその勇気に、心から拍手を送りたい。
野球に人生を教えられた、実に素晴らしい、福田らしいプレー。